研究概要 |
平成5年度では前年度の成果を基に、始めに熱励起によるSi_2H_6照射面の平坦化機構を調べた。このため、熱励起過程における表面構造の時間変化を、CCDカメラを用いたRHEEDパターンの撮影によって観測した。この結果、サブ原子層吸着したSiが表面泳動により凝集してテラスを形成し、その後、このテラスが拡大して、原子的に平坦な表面になると解釈できることを明らかにした。この成長過程は活性型の反応機構を示しており、その活性エネルギーも得られた。さらに、この活性化エネルギーは最近接格子点への移動エネルギーと最近接格子点間の結合エネルギーからなるとして評価できた。また、この熱励起による表面泳動過程の初期には水素の熱脱離過程を含むと解釈できることが分かった。以上、熱励起による水素の熱脱離過程と表面平坦化過程が明かとなり、平坦化に要する時間と表面温度との関係も明かとなった。この結果を基に、熱励起にAr^+レーザー用いてSi_2H_6照射とレーザー照射を多数回繰り返し行い、サブ原子層を成長単位としたディジタルエピタキシャル成長が可能であることを実際に確認した。この方法をSALE(Sub-Atomic-Layer Epitaxy、サブ原子層エピタキシー)と名付けIUMRS(Tokyo,1993)の国際学界で発表した。これらの結果を基に、平成4年度で構築した電子線励起システムを用い、電子線励起による水素脱離の可能性について調べるために、電子線照射をしながら連続CVD成長を試みた。この結果、成長膜を確認し、電子線照射の効果があることが分かった。現時点においては再現性に乏しく条件の把握は不十分であるが、今後のエピタキシャル成長技術への新しい展開を示す端緒を得たと言える。以上、IV族半導体を主体としたエピタキシャル成長技術およびディジタルエピタキシャル成長技術を展開する上での重要な知見および手法が得られたと考える。
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