研究概要 |
現有のRFプラズマCVD装置に2系列のガス導入機能を持つシャワーヘッド型電極を設置し、本研究の課題であるシランーフッ素化学反応系にプラズマを適用できるように装置の改良を行い化学反応系のみの場合との比較において、プラズマの効果を検証を行った。まず、プラズマやシランのフッ素酸化にともなって生成する発光励起種(SiH^*,SiF^*)からの発光を手がかりとして、シランのフッ素酸化反応に与えるプラズマの効果について調べた。一例として、シラン流量:10sccm(He希釈率5%)、圧力400mtorr、RF投入電力5W(74mW/cm^2)の条件下では、フッ素/シラン流量比>0.1附近からSiF^*の発光が観測され始め流量比の増加に伴ってその発光強度の増加が認められた。この条件では、流量比の選択によって主にプラズマによって生成すると考えられるSiH^*の発光ピークに対して相対的なSiF^*発光強度比を0.2〜0.7(流量比0.2〜1.0)にわたって容易に制御できことが分った。一方、同様の条件下でRF電力の投入を行わない場合、流量比<1の条件下では、SiH^*、SiF^*の発光はほとんど検出できず、さらにフッ素流量を増加させるた場合でも微弱なSiF^*の発光が観測されるにすぎない。条件をかえて、シラン流量を20sccmまで増加させるとシランーフッ素反応系に特有な化学発光が観測される。これらの事実は、本研究で期待したプラズマによるシランのフッ素酸化の加速を示唆する結果と判断された。実際に成膜を行った結果では、プラズマを印加しない場合には膜の成長は認められない条件においても膜の堆積が認められ、また、シランのみのプラズマ分解による膜成長と比較しても成長速度の大幅な増加(前述の条件下では、流量比0.4附近において約4倍)が観測された。成長した膜は、化学反応系に比較して広い面積にわたり均一で、また膜構造はフッ素系プロセスによる膜の特徴を示し、成長温度の上昇により結晶質膜を成長できることが十分期待された。
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