平成4年度から6年度の3年間の研究成果の概要を以下に示す。 1.本研究の真空蒸着法により作製したα-Si:Hは、従来の低真空化学気相堆積法により作製した膜に比べ膜中の水素含有量が少なく(SIMS測定の結果)、またレーザーアニール時における水素の突沸による膜の損傷の少ない良質な膜であることが分った。 2.試作した多面鏡反射板ホモジナイザーを用い、レーザ照射面内でのエネルギー均一化を計ることができ、均一な結晶化が行われることが明らかになった。 3.アニールによるグレインサイズはas-grown Si薄膜の膜厚に依存し、Si薄膜が溶融深さよりも薄い場合には、結晶化速度が遅くなることが明らかになった(SEM観察の結果)。これは主に膜中でのエネルギー蓄積量が膜厚により変化するためであり、膜厚が薄い場合は熱エネルギーの蓄積により膜全体が溶解温度に達しやすくなり、結晶化速度が遅く、熱平衡が持続されやすい状態となるためであると説明される(シュミレーションの結果)。 4.レーザーアニール時に基板加熱することで熱平衡状態の持続を促進し、グレインサイズを拡大化させることができ、アニールの均一性の向上が可能となった。 5.レーザーパワーについては最適値があり、特に高い出力の場合はSi薄膜表面にヒルロックが発生しやすくなることが分った。 以上本研究では主に真空蒸着法によるα-Si薄膜の作製、多面鏡ホモジナイザーによるアニールの均一化、アニール時の基板加熱効果について検討し、グレインサイズが大きく、かつ比較的大面積について均一性の高い良好なレーザーアニール技術を確立することができた。
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