研究概要 |
初年度においては、反応性スパッタによる薄膜の作成過程を検討するために、また膜作成プロセスの監視するために、放電プラズマの発光を測定した。本研究では、アルゴンガスに酸素ガスを混入した混合ガスを用いており、放電スペクトルにも相互作用が予想された。しかしながら、実測した結果では、本研究で用いた15%以下の混合割合では酸素の発光は見られずアルゴンからの発光がほとんどであった。スペストル強度は入力電力に依存して大きくなり、ガス圧が1Pa付近で発光強度が最大となることが認められた。作成膜の電気的特性は3Pa,100Wの条件で作成されたものが最良であった。次年度は、作成された膜の光学的特性および光導波路への応用を念頭に光の伝搬特性を調査した。反応性スパッタにより作成されたタンタル酸化薄膜の屈折率および減衰定数を光の波長の関数として測定し、作成条件の一つである熱処理温度との関係を調査した。波長に近い膜厚の薄膜の場合、光の干渉のため反射率が振動波形をとり光学的屈折率および減衰定数の評価は単純ではなく難しいが、本研究では減衰も考慮した理論式を用いパソコンの利用により簡単に解析できる方法を確立した。可視光領域における屈折率は作成法に依存して2.4〜2.7の値を、また減衰定数は0.005〜0.03の値をとることが分かった。屈折率の小さな値は長時間かけて作成した場合に得られ、熱処理温度を350〜550℃の範囲で変化させても、光学的特性は変化しなかった。次に、光導波路材料として応用する場合に重要となる光の伝搬特性を調査した。酸化層とガラス基板との境界面および表面界面での反射損失と試料内部での吸収および散乱損失の観点から検討したところ、反射率はほとんど100%に近いが、減衰定数は0.3〜0.8cm^<-1>とやや大きい。通常の光回路は形状が小さくこの程度の損失は許容され、むしろ屈折率が大きい点を活かした応用が考えられる。
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