研究概要 |
平成4年度の研究計画において,結論として(1)ターゲットホルダを作製し,ZnO膜とITO膜を作製し,(2)膜の評価を行い,(3)本方式が通常のスパッタ法よりも有効であることを示す,という所期の目的は一応達成できた.しかし,表題に関係する(4)の紫外線を照射して膜作製を行ったときの効果については予想外の状況である:まず,ターゲット及びターゲットホルダを製作し,ZnO:A1スパッタ膜の作製を行った.その時,紫外線を照射しつつガラス基板上に膜作製を行ったところ,照射がない場合に得られた膜の抵抗率とほとんど変化はなかった.このような原因がどのような理由によるものかについてその後研究を進めた.まず,膜の前面におけるプラズマポテンシャルの測定を行ったところ約100V近くのポテンシャルとなっており,これによる正イオンの膜衝撃の影響が無視できないことがわかった.イオンの膜衝撃によりZnO膜中にZn欠陥によるアクセプタが生成されこれが膜の抵抗率,キャリア密度,移動度にも影響していることがわかった.(結果はサンヂエゴの国際会議,1993,4月に投稿中)そこで,この影響を少なくしなければ紫外線の膜照射の影響も評価できないため,ターゲットホルダを設計し直した.内蔵磁石の強度を約2倍の強さにして4X10^<-4> Torrまで放電可能なようにして膜を作製した.得られた膜はこれまでと逆の特性を示し,低ガス圧でより低い抵抗率の膜が得られ,これまで報告されている膜と同等またはそれ以上の膜であると評価された.目下はさらにこの方式により,より良い膜作製の条件確立を調べている.ITO膜作製も並行して平成5年度1月から取り組んでいるが十分な結果を得ていない.しかし,膜作製に影響する高速酸素原子や負イオンの測定を行っている.(1993,3月の応用物理学会)今後,膜の低抵抗化に影響する要因の解明とともに,最終的には紫外線の影響の程度を見極めたい.
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