研究概要 |
本研究は,真空中の単ロール超急冷法で作製される板厚10mum以下の極薄Co基アモルファス磁性合金超薄帯の,MHz帯の高周波領域での磁心損失の一層の低減化と初透磁率の周波数特性を向上させることを目的として2カ年間実施された。 本年度は,前年度に引き続き、高周波磁気特性に及ぼす合金組成と熱処理条件についてを検討した。さらに,これらの問題と磁化機構の関係を明らかにするために,Kerr効果を用いた磁区観察を行った。その結果,(Fe-Co-Cr)(Si-B)系では、幅方向磁界中熱処理を施すと,(Fe-Co-Cr)の増加にともなって,磁区の微細化が進み,(Fe-Co-Cr)_<79>(Si-B)_<21>の試料薄帯でMHz帯の高周波領域での磁心損失特性が30%程度さらに改善されることが分かった。さらに,初透磁率については、低周波域の値は低下するものの周波数特性は大幅に改善され、遮断周波数が数MHzにまで伸びる結果が得られた。 一方.誘導磁気異方性を十分抑制した組成の薄帯については,歪取り熱処理の場合,明瞭ではないが,数mum程度の極めて微細で複雑な磁区が多数形成されていることが窺われた。 2カ年の本研究で、筆者ら自身の世界最小の磁心損失値をさらに低減することができたが,MHz帯で実用に供するには,損失の大幅な低減化を図る必要がある。そのためには,幅方向磁界中熱処理によって得られる幅方向磁区の磁区幅を,少くとも1/2-1/10にする必要がある。また,磁区の固着化についての基礎的な検討も重要と考えられる。 これらの課題については,微細磁区の観察と共に今後さらに詳しく検討する予定である。
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