研究概要 |
本研究の目的は,慣用暗号のシステムモデルであるシャノンの暗号システムを通して,相関を有する2つの情報(X,Y)を伝送する場合に対する符号化定理を構築することにある。このことに関して本年度は以下の成果を得た。 (1)相関を有する2つの情報(X,Y)を,シャノンの暗号システムを通して伝送する場合において,X,Yのどの情報が秘密であるか,X,Yのどの情報を正規の受信者に伝送しなければならないか,安全性の測度として何を用いるかなどにより,暗号システムをの符号化問題を分類し,解決しなければならない問題点を明らかにした。 (2)上記(1)で分類された各場合に対して,それぞれ符号化定理を証明した。 (3)上記(2)の全ての場合に対して,証明を統一的に行うためには,相関を有する情報(X,Y)から共通情報(Common Information)を取り出す必要があることを示した。そして,従来知られている共通情報量の定義とは異なる,新しい共通情報量の定義を与え,その共通情報を取り出す符号を用いることにより,統一的な証明が行えることを示した。 (4)上記(3)で新しく定義した共通情報が,相互情報量に一致することを証明し,「相互情報量が共通情報を表している」という直感が正しいことの意味付けを与えた。 (5)本研究と通して,上記の本来の目的以外に,秘密分散システムに対する新しい符号化法や,Shannonの暗号システムに対するRate-Distortion理論に関し,新しいアイデアを得た。
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