研究実施計画に従って研究を遂行し、ほぼ初期の成果を得たのでその概要を以下に示す。1.新しいサブバンド方式として、各チャンネルのサブサンプリングパターンが互いに異なる相補型サブバンド方式を提案し、再生画像が原画像と等しくなるために分析合成フィルタが満たすべき完全再構成条件を明らかにした。2.分析フィルタによるチャネル分割の影響と合成フィルタを通った量子化雑の再生画像への影響を総合的に評価する指標として符号化利得を取り上げ、提案方式における算出方法を明らかにした。3.符号化利得を最大とする最適分析合成フィルタを、完全再構成条件を用いて明らかにした。最適分析フィルタは、入力信号の振幅特性の平方根の逆数によるエンファシスと理想帯域分割フィルタから構成される。4.最適フィルタにおける符号化利得を計算した結果、8チャネルDCTと比べて、一次元の場合で1.7dB二次元では最大3.4dBのSN比改善が実現できる。5.エンファシスによるSN比の改善効果は、16チャネル以下程度の分割数が少ない場合に特に有効である。また、超高精細画像のように画像の相関が高くなると改善効果は大きくなる。6.最適フィルタで必要となる理想フィルタの現実的な近似解として、直交変換を含む既存のサブバンドフィルタを検討した結果、QMFとエンファシスの組み合わせにより、最適フィルタに近い符号化利得を持つ線形位相特性のサブバンドフィルタを構築できることがわかった。7.6.の結果に基づいた超高精細画像の圧縮シミュレーション実験によって、DCTやQMF、SSKF等の従来のサブバンド方式より高い符号化性能が得られた。また主観評価実験の結果も良好であった。8.以上の結果、提案方式がこれまでに報告されている符号化方式よりも高性能であり、超高精細画像の高能率符号化に適していることが判明した。
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