本年度は、まず前年度からの検討課題であった有限な径を有する線条アンテナの諸特性の詳細な検討を等価ダイポール法を用いて行った。初めに半波長アンテナの励振問題を取りあげ、アンテナの給電ギャップ部分に強制電圧源による一様電界を印加した場合のアンテナ上の電流分布および入力インピーダンスを求めた。その結果、入力インピーダンスはギャップ間隔がlambda/50以下では一定値をとり、アンテナ径を細くするとその値は実数部、虚数部ともに増加する傾向にあることがわかった。次に受信問題を取りあげ、無給電素子と給電ギャップをもつ場合の双方について特性の検討を行った。無給電素子については、平面波が入射したときに素子表面に誘起される電流分布を求めた。その際、径方向に配置するダイポール数は素子半径がlambda/20以下では4個考慮すれば十分であることが確かめられた。また、電流分布は径が有限になると平面波の照射部分との陰の部分では差異が現れ、径が太くなるほど、差異が顕著になり、細くすると正弦波に近づき、lambda/200以下ではほぼ正弦波になり、線条素子と見なせることがわかった。しかしながら、給電ギャップを設け、受信アンテナとしたときにはギャップ間隔が僅かlambda/400存在しても電流分布は正弦波から大きく崩れることが明らかとなった。また、ギャップ間の開放電圧値はギャップ間隔よりもアンテナ径に大きく依存することも見い出した。最後にこれまで解析を行ってきた軸対称形状でない3次元角柱導体(立方体)を散乱体に取りあげ、その散乱断面積および散乱波パターンを求めた。散乱断面積については、Xバンドで実験を行い、測定値と理論値の良い一致を確かめた。このことは、等価ダイポール法が軸対称形状のみならず、任意形状の3次元物体の散乱問題にも十分適用可能であることを示すものであり、今後は形状に応じたダイポールの最適配置などの検討が必要になってくると思われる。
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