LSIテストに関しては、署名解析法で被検査回路の出力をハミング符号化し、その検査ビットの系列を圧縮された署名系列とする新しい着想に基ずく方法を提案した。この方法の利点は、従来の割算器による圧縮の方法では見逃し誤り率が一定の定数値に収斂したのに対し、見逃し誤り率が確率的に0に収斂することにある。シミュレーションによってもこの性質が実現されることが確認され、今後実用上も有望な圧縮の方法になると思われる。また署名解析法のランダムな被検査回路へのテスト入力の一つの生成法として、二次元M系列(M平面)の部分平面を応用する方法について検討した。数種類の統計的検査の結果、この部分平面は従来行われてきた一次元M系列から生成した部分系列と同等、又はそれ以上のランダム性が得られることが明らかになった。以上をまとめて平成6年2月の電子情報通信学会FTS研究会で発表した。またハミング符号を用いる署名解析法については、平成6年6月にノルウエーで行われるIEEE情報理論シンポジウムに投稿し、採録となった。 ランダム系列の応用の一つとしてスペクトル拡散通信方式の研究を行った。周波数有効利用の見地からM-aryスペクトル拡散通信方式が最近注目を集めているが、その同期捕捉方法について、従来同期用の信号を別途挿入する方式が提案されていた。それに対して連接系方式による同期捕捉方法を提案し、信号電力対雑音電力比の改善が得られることが判明した。この結果は平成6年3月の電子情報通信学会スペクトル拡散方式研究会で発表する予定である。
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