研究概要 |
MRIは非侵襲的体内画像化手法として日常診療に使われているが,撮影時に体動があるとY(位相軸)方向にアーチファクトを生じる.これを後処理により除去できれば,撮影現場で患者が帰った後の補正処理や,小児など数分に渡る撮影に耐えることのできない患者の撮影に威力を発揮する.また,微小な体動がとくに問題となる高傾斜磁場による脳内水分子拡散潅流画像化などに対しても,その寄与するところは大きい. 本研究では,MRI撮像原理に基づき,撮像断面内の剛体的平行運動により生じるアーチファクトの除去手法を開発した.従来は発見的基準に基づく逐次近似法を用いてX(周波数軸)方向,Y方向の体動同時推定手法が提案されていた.それに対して,本研究ではX方向,Y方向の体動の影響は異なり,個々に体動推定が行えることを解析的に示した.すなわち,X方向の体動(基準位置からのズレ)はMRIエコー信号の周波数シフトとしてそのまま現れ,またY方向の体動は頭部接線上などの対称画像値Y方向プロフィールの直線位相からのズレとして明確にとらえることができることを示した.そして,この結果を順次用いて2次元的剛体運動によって引き起こされるアーチファクト除去が可能であることをシミュレーションにより示した. 本手法は,従来の逐次近似による手法にくらべ,根拠が明確であり,高速かつ安定に解を求めることができる点に特徴がある.実用に供する場合には,対称画像値ラインの存在の問題があるが,これに対しては硫酸ニッケルやオリーブオイルなどの高感度,かつ等密度マーカーを事前に装着するなどで対処できる.
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