研究概要 |
微小な灌流・拡散MRI像を得ようとする場合,アーチファクトが生じ易く,その除去手法の開発が待たれていた.本研究では撮像断面内の平行移動,回転,拡大縮小によるアーチファクトにつきその除去手法を開発した. (1)平行移動する剛体の場合:第nビュー(位相エンコード)におけるMRI信号f(t,n)のフーリエ変換F(x,n)が時刻nにおける対象の周波数軸(x)方向の位置を示していることを利用して,周波数軸方向の体動を補正した.一方,これとは独立にy方向の体動補正ができる手法を開発した.本年度はとくにHedleyらの位相検索法と比較を行い,x軸方向に画素以上の体動がある場合には提案手法が優れていること,y軸方向には位相検索法が優れており,これらの組み合わせが最も適切であることを示した. (2)回転する剛体の場合:回転中心,回転角ともに未知のステップ状回転につき,まず再構成画像の領域外エネルギーが最小になるよう回転角推定を行い,つぎに回転中心が原点からずれていることによる位相変動を除去するため位相検索手法を適用した. (3)拡大・縮小する柔軟物体:腹部のように呼吸等に伴ってx,y軸に沿って比例的に拡大縮小する場合には,(1)と同じく周波数軸上の投影よりx方向の動きをまず求め,次に位相検索手法によりy方向の位相補正を行い,アーチファクト軽減ができることを示した. これらの手法は,通常MRIの数分〜数十分の撮影時間中にじっとしておれない子供や老人などの体動によるアーチファクト除去にも適用できる.しかしながら,より実用に近づけるためには,多くの自由度を持つ柔軟モデルで動きをモデル化する必要があり,今後の課題である.
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