研究概要 |
今年度は理論的な基礎を固めることに重点を置いて研究を進めた。すなわち,グリッド点を保存する幾何学的変換について数学的に考察を進め,特に図形の性質をも保存する変換を数学的に特徴づけた。 この性質に基づいて,凸多角形の内部に含まれるグリッド点を効率よく列挙する方法と,x座標最小のグリッド点を求める方法を得た。基本的な考え方は,内部に含まれる格子点の個数に比例する時間で容易に格子点の列挙ができる「容易な多角形」なるものを定義し,問題の凸多角形から容易な多角形部分を切り取った残りに上記の変換を施し,この操作をくり返すというものである。凸多角形について考える前に三角形内部の格子点列挙の問題について考察し,与えられた三角形を包含する最小の長方形の短い辺の長さnに対してk+log nに比例する時間内に内部格子点を列挙するアルゴリズムを開発した。ただし,kは列挙される格子点の個数である。この考え方を発展させて、凸m角形内部の格子点をk+m+log nに比例する時間で列挙するアルゴリズも開発した。鍵になる考え方は、先に述べたのと同じ変換を用いるわけであるが、毎回すべての頂点を変換するのではなく、変換行列だけを計算しておいて、必要に応じて頂点の変換を計算するというものである。 現在では,上記のアルゴリズムを実際に計算機上で実行するべくC言語のプログラムの開発に取り組んでいる。基本的な部分は完成したが,計算誤差の影響で内部と外部の判定を間違えることがあるので,さらに計算誤差に強い方法を考察している。 得られている結果はすべて2元次のものである。これらの結果を多元次のものに拡張することも重要である。このうち,3次元の凸多面体の内部の格子点を列挙する問題については基本的な接近法がようやく分かりかけてきた段階である。
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