視覚障害者のための計算機環境を研究するにあたって、まず図形画像の扱い方の問題を解決することにした。それは視覚障害者のために一般書籍を点訳したり、晴眼者との情報交換を行うにあたって図形画像や高等数学の数式の扱い方がネックになっているためである。特に図形画像に関する触図は、その制作に手間と費用と時間がかかるために、過去あまり制作・利用されておらず、触図を作る方も読む方も経験が浅く、方法論として確立されていない。こうした状況を改善し、もっと触図の普及をはかっていくことが視覚障害者が情報技術者になるには必要と考え、視覚障害者(全盲者)がもっと自由に図形画像を扱え、馴染んでもらえるように、パソコンと点字プリンタプロッタを活用した触図の作成編集システムを開発した。本システムではマウスを用いてパソコンのスクリーン上で原図を作成すれば、そのままのイメージで点字プリンタプロッタ上に点画(触図)制作できる。特徴は、点字と図形の合成をスクリーン上で容易にできること、市販ソフトの花子での作画データを取り込んで利用できること、パソコン表示画面のイメージを点画ハードコピーとして取れること、点字プロッタの分解能や点サイズ(3種類)を生かした高精度の点画を作成できること、画面スクロールや消去移動などのエディタ機能により使いやすいこと、計算機教育に必要な流れ図制作が容易であること、などが挙げられる。また点字プリンタプロッタを他のプログラムからも容易に組み込み使用できるように、点画ライブラリの形で基本的な点図形処理を行うためのモジュール群を開発した。システム形態は点字プリンタプロッタ(NewESA721)とNEC PC9800DA(マウス付き)をプリンタインタフェースで接続した。制作したプログラムはTurbo C言語を使用し、総ステップ数約6000行である。研究発表は手法的なものについては画像工学関係の研究会・学会に、視覚障害者教育的なものについては教育工学関係の研究会・学会というように二通りに分けて行った。
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