市販のPZT系圧電セラミックスを購入し、ステンレス製治具で積層、締結した構造の8ビット・デジタルアクチュエータを試作した。このデジタルアクチュエータは上位4ビットと下位4ビットの2つのユニットより成り、各30枚のセラミックスより構成されている。下位4ビットのユニットへは上位4ビットのユニットの変位の1/16となるような電界を印加することで総計60枚のセラミックスで8ビットにコード化されたアクチュエータが実現できた。 試作されたアクチュエータの直線性は極めて優れ、最大非線形性誤差でアナログ方式では-38%もあるのに対し、デジタル方式では±0.2%以下であった。また、ヒステリシス特性も大幅に改善され1ディジットを数ms程度で変化されたときには殆んど識別できない。1ディジットを数min程度かけた極めて遅い変化のときにはヒステリシスが認められたが、これも新たにセラミックスを制御する電気信号を電圧ではなくて電荷で動作する駆動電源を設計、製作し使用したところ、いかなる遅い変化に対してもほとんどヒステリシスが見られないようになった。さらに、ヒステリシスの原因となる分域構造をとらない電歪材料を用いた実験も試みたが、この場合多少温度特性が悪くなったが電圧駆動方式による遅い変化があってもヒステリシスは認められなかった。 問題点としては、デジタル・コードが変化するときスパイク的な変位であるグリッチ雑音を発生する場合があることである。これは信号の印加されていないセラミックスの質量の慣性効果によるものと考えられるので、動的特性を考慮した適切な時定数を有する信号を印加することで解決できる見込みである。
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