研究概要 |
ビル内オフィス等における情報機器端末,リモートコントロールユニット等を無線ネットワークによりケーブルレスで接続する要求が高まっている.郵政省電波利用懇談会の報告においても新たな電波利用の発展に関する問題点として,端末機器のコードレス化による設置の機能化と経済化(いわゆる構内無線通信)が挙げられ,開発すべき重要な利用技術として電波の脆弱性克服技術が挙げられている.本研究は微小電力室内ディジタル無線通信を安定に実現するための開発すべき技術課題に取り組むものである.このような通信方式の開発にはまず室内等の限定空間における電波の伝搬状況の詳細な把握が必要である.限定空間内での電波伝搬は反射,散乱を繰り返す複雑な多重伝搬となるので,受信点における多重到来波の数,到来方向,強度,および伝搬遅延時間を推定するのが最も有効な解析法である.特に,伝搬遅延時間はディジタル通信において受信波形の遅延ひずみ量の尺度となるのでこれを取得することは非常に重要である.我々はすでにこれら多重波の信号パラメータの高分解推定システムを開発した.これはMUSIC法,ESPRIT法と呼ぱれる高分解能スペクトル解析法に基づくものである.本年度は,昨年度から引き続きこの推定システムに改良を加え,多重波の到来方向と伝搬遅延時間を同時に推定するための簡易な受信測定システムの開発を行った.特に,微弱な多重伝搬波の信号パラメータをより正確に推定するために,アダプティブアレーアンテナの原理を応用した適応フィルタリング技術を導入し,計算機シミュレーションによってその有効性を示した.また,無線LAN用のアンテナとして,三次元コーナリフレクタアンテナの指向特性の理論解析,平面アレーアンテナによるマルチビーム方式の指向性ダイバーシチアンテナの実験的検討も行った.最後に室内での種々の実験を通して,開発した多重波パラメータ推定システムの有効性を確認した.
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