本研究は、超小形電気機械システム(MEMS)のための光によるパワー供給を目指すための研究である。これまで問題になっていたスパイラルコイルを多層化するときに発生する凹凸の問題を解決するために、本質的に平坦化可能な蒸着アルミニュウム膜の部分的陽極酸化スパイラルコイルを作成する技術を確立した。特に陽極酸化終了時の検出が問題になり、モニター用コイルを近接して設け、このコイルを流れる電流のチェックで解決した。2層薄膜コイルおよびこれらの組み合わせによるトランスの形成方法は確立することができた。しかし、さらに多層化して第一の目標の5V出力を得るための実験は行なわなかった。これは、単に多層化しても歩止りが悪くなることに気づき、他の多層化方法を検討し、新しい提案したためである。第二の目標であるフォトセルの高効率化に関しては、光ファイバを通して、LDからの光をフォトセルに高効率でカップリングさせるための新しい方法を提案し、まだ検討を要するが実証することができた。これはSiのp-n接合フォトセルに入射する830nmの光が、p-n接合面に平行に進入しながら吸収されるように、p-n接合面を形成することにより達成される。この技術の確立のため平成6年度の科学研究費を申請している。第三の目標である最適化動作とシュミレーションに関しては、PSPICEシミュレータを用いて解析した。第四の目標である直流光照射のための高速動作低オン抵抗トランジスタの開発に関しては、新しくショットキトンネルトランジスタというデバイスを提案して、その動作を確認したところである。これはショットキダイオードのMOSゲートを設けたもので、ゼロバイアス付近のトンネル電流を使用するため、本質的に低電圧駆動、超小形化、高速応答性が期待できる。この成果を現在IEEE、Electron Device Lettersに投稿中である。尚、この新しいショットキトンネルトランジスタは、温度センサとしてのショットキバリアサーミスタの研究中に考え出されたもので、超LSIへの応用も期待できる。
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