本研究の目標は、任意方向への高速光偏向を行う半導体光偏向素子の実現でる。このためには以下の検討が必要である。1)最大偏向角を大きくする。2)解像点数を大きくする。3)素子容量を小さくする。そこで、以下の4点を研究目的としている。1)電極間の静電容量が小さく印加電圧に対する位相変化量の大きな光導波路構造を明らかにする。2)導波路間隔を狭くするために、各導波路間で良好な電気的絶縁が得られる導波路構造を製作する。3)電極配線を工夫し、半導体導波路の本数を増加させる。4)光導波路アレイへの光分岐法を確立する。平成5年度は以下の研究成果を得た。 1)ポリイミド/ポリメタクリル酸メチル高分子導波路内での光の回折を用いた光分岐素子のAlGaAs/GaAs導波路形状の単一モード化を行った。また、挿入損失、導波路損失等をビーム伝搬法およびモード結合法を用いて検討し、最適構造を明らかにした。半導体2次元導波路を用いた場合に比較し、約2倍の導波路への光分岐が可能となる。損失の増加は、フレネル反射による損失0.7dBとモード不整合による損失0.9dBと見積もられる。本研究により、光分岐法はほぼ確立できた。 2)素子容量を小さくするには、位相制御導波路の位相変化量を大きくする必要がある。AlGaAs/GaAs多重量子井戸導波路を製作し、マッハ・ツェンダー干渉計を用いて位相変化を測定した。共鳴状態より数十meV離れた光で、バルク結晶に比較し数倍の電気光学効果が得られた。現在、最適設計を行なっている。 3)9本の位相制御導波路を有する導波路アレイ型光偏向素子を製作した。リッジ構造の半導体導波路アレイ上に高分子材料(ポリイミド)をスピンコート法により塗布し、RIEにより電極孔を形成し、多重配線を行った。今後、偏向動作の確認を行う予定である。 以上、ほぼ目的を達成できたものと考える。これらの結果を踏まえ、研究を継続する予定である。
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