負の光非線形係数の利用により、光波界分布の波形整形が可能である。この効果はハイパワー用の小型CWレーザーとして注目されているアレイ形半導体レーザーからのアレイ状空間分布を平担化し、単純な単峰分布に変換・整形するデバイスとして応用できる。種々の光波界分布をもつ光波を、負の光非線形係数を有する非線形材料中においてコヒーレントに波形整形する光波界分布整形装置に対するデバイス設計上の指針を得るため以下の検討を行った。 (1)計算機シミュレーション 光波界分布整形に対する非線形係数の大きさと光強度の関係を検討するために、光波伝搬に対して、非線形波の過渡的振舞いをも含めた形で解くことができる固有モード展開法及びビーム伝搬法を用いて計算機解析を行った。これにより負の非線形屈析率に基づく波面操作によって光波が如何に整形、再配分されるかの過程が明らかとなり、さらに分布平担化もしくは単峰化のための諸条件が明らかとなった。 (2)光波伝搬特性測定実験 実験系システムの構成として、コンピュータを用いた光強度波形処理装置の整備を行った。光導波路測定系として、対物レンズを用いた近視野像観察、画像処理による光強度分布測定システムを構築した。これにより光導波実験系及びその技術はほぼ確立でき、数μmのコア厚のGaAs系薄膜試料に対する1.15μm赤外光の単一モード伝搬(尊波)を確認した。具体的デバイスをGaAs多重量子井戸(MQW)光導波路で構成することから、現在、さらに、非線形性確認のために、MQW光導波路の光吸収ピーク波長より長波長側の半導体レーザーを用いて、光強度の変化に対する負の光非線形性の確認実験を行うベく準備を進めている。
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