最近の網監視機能や各種制御機能の発達はめざましく、前年度に考察したものより高度の学習的ルーチングも実施可能になるものと予想されるとの観点から、当年度では、全局の呼発生情報に基づいて、より厳密な意味での負荷均等化を実現する学習的ルーチング方式を構築・提案した。この方式は、あるリンクのトラヒックがあるレベルを越えたときその原因となる発信局からのあふれ呼を学習的に空き迂回路に振り分けることにより各リンクの呼損率を均等化しようというものである。この新提案方式と前年度に提案した方式のルーチング性能を調べるため、比較対象として現在最も有効とされている状態依存型ダイナミックルーチング方式あるいはまた従来の固定ルーチング方式を選び、これら4方式について前年度に作成されたネットワークシミュレータを用いて、特に迂回候補路の設定を幾つか変えるなど様々な条件のもとで詳細なシミュレーションを実施した。 その結果、迂回候補路を勝手に設定した場合には新提案方式が必ずしも最も優れているとは言えなかったが、他研究者によって既に提案されている迂回候補群作成法を用いて迂回候補路を作成した場合には新提案方式が、設定したいずれの条件の下でも損失呼数と平均経路長において最も優れていることがわかった。 以上のように、新提案方式は種々の状況下で他方式に比べて優れたルーチング性能を発揮できることが確かめられた。本研究の主な意義は、ここで構築・提案してきた学習的ルーチング方式が、状態依存型DR方式や固定方式では理論的に保証されていない負荷均等化を保証するものであることを理論面および実際面から示したことにあると考える。回線網の高能率使用に関する本研究結果は、当初の目的である、既設電話ネットワーク上の今後の通信多様化に対応できる柔軟で総合的なルーチング方式の開発に向けて十分役立つものと期待される。
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