平成4年度では、研究代表者らが先に開発した学習制御方式を電話ネットワークに適用することにより、ネットワークの負荷均等化を目的とするルーチング方式を構築・提案した。この方式は、適当に設定した経路群の中から、重み付き呼損頻度が最小となる経路を選ぶものである。この方式は、経路群内で重み付き呼損頻度が漸近的に等しくなるという意味での負荷均等化を実現することが示された。また計算機シミュレーションによれば、提案方式が損失呼数と平均経路長において学習オートマトンを用いた方式よりも優れていることが確かめられた。ただし上記負荷均等化特性は経路群の設定に大きく依存することがわかった。 平成5年度では、最近の網監視機能や各種制御機能の発達状況から見て前年度のものより高度の学習的ルーチングも実施可能になると予想されることから、全局の呼発生情報に基づいて、より厳密な意味での負荷均等化を実現する学習的ルーチング方式を構築・提案した。この方式は、あるリンクのトラヒックがあるレベルを越えたときその原因となる発信局からのあふれ呼を学習的に空き経路に振り分けることにより各リンクの呼損率を均等化するものである。この新提案方式と前年度の提案方式の性能を調べるため、状態依存型ダイナミックルーチング方式を主な比較対象として、様々な条件のもとで詳細なシミュレーションを実施した結果、他研究者によって提案されている迂回候補群作成法を用いて経路群を設定した場合には新提案方式が、いずれの条件下でも損失呼数と平均経路長において最も優れていることが確かめられた。 本研究の意義は、ここで構築・提案してきた学習的ルーチング方式が、現行あるいは従来方式では理論的に保証されていない負荷均等化を実現できることを理論面と実際面から示したことにあり、本研究結果は将来の有効なルーチング方式の開発に向けて役立つものと期待される。
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