本研究では同軸プローブとベクトルネットワークアナライザを用いて反射法により生体組織の誘電特性を測定、続けてその同じプローブで測定領域を加温後、再び誘電特性を測定、この2回の測定で得られた誘電特性の値と温度変化量から誘電特性の温度係数をinvivo計測する手法を開発することを目的としている。 (1)同軸プローブによる誘電特性測定領域の同定 セミリジッドケーブルの外部導体先端を1mm弱剥離して中心導体を露出した微小プローブやN型コネクタの先端を平坦に加工した同軸平坦プローブを用いて生体組織の誘電特性を測定する手法は既に開発したが、これらのプローブによる実際の組織測定領域の広がりについては必ずしも明確ではない。そこで誘電特性が生体等価な食塩水中で同軸プローブの外部導体と同電位に保った微小金属片をプローブ中心導体に近づけ、両者の距離とプローブの反射特性の変化を記録する方法、およびアンテナの相反性を利用して誘電特性が生体等価な寒天製の生体物理モデルをプローブで短時間加温し、赤外線サーモカメラで加温領域の断面温度分布を計測記録する方法により測定領域の広がりを定量的に評価した。 (2)加温と誘電特性の測定が可能な同軸プローブシステムの開発 誘電特性測定時にはプローブをネットワークアナライザ側に、加温時には1.8〜50MHzで最大10Wまでの加温が可能な高周波パワーソース側に切り替える高周波スイッチを用い、加温と測温が可能な同軸プローブシステムを開発した。また、スイッチ切り替えにより測定時のプローブ反射特性に変化の生じないこと、加温電力と加温時間により変化するプローブ周囲の温度分布が一定の関数形で表せることを確認し、プローブ半径方向の3点で温度測定の可能なセンサを埋め込み、その関数を定めることにより誘電特性の温度係数が計測できることを示した。
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