昨年度までに、進行波型超音波モータを位相制御してトルクと回転速度を零から正負の最大値まで自由に調節する技術を開発した。また、この技術を応用して運動インピーダンスを自由に調節できるアクチュエータシステムを実現した。さらに、このアクチュエータシステムを実装して垂直2軸SCARA型ダイレクト・ドライブ・マニピュレータを製作した。 今年度は、製作したダイレクト・ドライブ・マニピュレータによるコンプライアンス制御の実験を行い、当初の目的を達成した。このマニピュレータは、関節における等価的なコンプライアンス調節に加えダンピングも調節できるので、動特性の適応制御が可能で、起動時の即応性と停止時の安定性を同時に満足できた。また、コンプライアンス制御によって、逆運動学の面倒な計算なしで接触動作を実現した。本研究の目標を垂直2軸マニピュレータとしたことからくる構造上の制約から、水平面内の運動に限られるが、いかなる形状の作業対象物に対しても柔軟な接触作業を実現した。さらに、クランク回し運動を実行させたところ、比較的滑らかに回転可能な粘性負荷特性をもつクランクはもとより、ぎくしゃくした回転になりがちな無負荷クランクでも滑らかな回転を実現した。 進行波型超音波モータは、今のところ12kg-cm程度のトルクしか発生できないので大型のマニピュレータにはトルク不足だが、本研究で開発した程度の小型ダイレクト・ドライブ・マニピュレータのアクチュエータとしては十分実用になるとの結論を得た。進行波型超音波モータの耐久性については今のところ十分とは言い難いとの使用感をもった。
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