研究概要 |
弾塑性構造の信頼性解析など非線形問題では破壊関数が陽な関数形で表わせないので,解析的に破壊確率を計算することが困難である。そこで,このような場合の信頼性評価にはモンテカルロ法による数値シミュレーションが多く用いられる。しかし,一試行当たりの構造解析に時間のかかる問題や,極希に生じる破壊現象をシミュレートする場合,通常のモンテカルロ法は計算時間の面で問題が生じることがある。このため,加重サンプリング法や層別サンプリング法などの高速化法が提案されているが,これらの高速化法も対象とする問題により性能が大幅に変化する。従って,問題毎に適切な方法を選択する必要があるとともに,さらに有効な高速化法の開発が望まれている。 本研究では,高速化解析法の一つとして新しく空間分割探査法を提案した。この方法は確率空間を超立方要素に分割して破壊曲面を意図的に探査する。まず,確率空間を粗く超立方要素に分割し,要素の角点をサンプル点として解析して,各要素を(A)完全未破壊の要素,(B)破壊と未破壊にまたがる要素,および(C)完全破壊の要素の3種類に分類する。その後(B)要素のみを細分割し,細分割要素の角点で再び解析を行う。これを繰返して確率空間内の破壊曲面を次第に追いつめて行く。破壊曲面から離れた領域では荒く要素分割し,破壊曲面付近では詳細に分割して解析を行うため,確率空間から均等にサンプリングする層別サンプリングに比べてサンプル数を削減することができる。本研究ではまず空間分割探査法の定式化を行い,次に提案手法を数学的問題およびフレーム構造の弾塑性問題に適用して,その有効性を通常のモンテカルロ法および加重サンプリング法と比較検討した。
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