国内主要造船所(23社)について1979年から1992年までに受注した約3、000隻の工事状況を示すデータベース(海事プレス社)から発注量・竣工量・手持ち工事量及びその期間等について、パーソナルコンピュータによるリレーショナルデータベース処理を行った。その結果、市況によって船種、及び造船所共に差が生じることが分析でき建造状況が明らかになった。 相次ぐ造船不況により造船所は1980年・1988年の二度にわたりドック等の設備処理を行い建造能力を縮小した。しかし、設備縮小によって合理化が進み工数当たりのCGRTは増加する。さらに、作業効率化のための設備投資額と工数削減化との関係がデータより明らかになった。 一般に造船能力をドックで処理できる大きさで示す傾向にたいして、作業効率を考慮した建造能力システムを構築する作業を現在行っている。 次に、船種の発注する意志決定は、需要(リプレース・新規需要・投機)時に購入する船の採算(低船価・将来、その船の運行時に高運賃・低運行費)がどうかである。しかし、船価及び、運行時の運賃やバンカー代は不確定なものであるため意志決定が困難となる。一方、造船所側にとっても受注するかどうかの決定は、手持ち工事量・その時の受注船価等の不確定性を含む。 そこで、本研究の目的は、不確定性の基で損のない様に意志決定する為のモデルを構築することである。そのために、手持ち工事量データ・運輸省資料等による船価内訳の推移・海運市況による運賃及びバンカー代等のデータから種々の状態に関する観測値データの確率分布を作成しそれを基にして、ある状態に対して損失を最小にする様な意志決定モデルを現在構築中である。 これらの成果を本年中頃までに論文として海事産業研究所の論文集に投稿予定である。
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