研究概要 |
本年度は,次の研究ステップに従って,研究を実施した。 1.地震動モニタリングシステムを構築し,都市内に設置された地震センサーの計測値から,設置点以外の地震波動を推定する同定アルゴリズムを考案した。このため,確率システム論と最適制御問題によって定式化し,時空間的に変動する確率場を効率的に表現した。その際,センサーがある種の地盤に偏って設置された場合の対処や,各センサーの異常値の判定と処理方法についても検討した。 2.国内外の大学・研究機関・企業におけるシステム同定と制御研究の現状および実施例を調査した。ソフト・ハード面での問題点を洗い出すことにより,知的制御システムを構築する際の道を探った。 3.地震入力とともに,構造系の主要な箇所の応答をセンサーで計測し,振動系をシステムダイナミクスでネットワークにモデル化した。入力と応答波形を分析することで,環境の変化に対して巧みに適応させ,かつ構造に対する学習の結果,対象の特徴抽出機能を自己組織化させた。従来多用されてきたパラメーター同定に対し,提案方式は,対象の構造や機能が把握できるために,汎用性がある。本研究ではこのような構造同定をシステム同定と呼んだ。 4.時間依存型評価関数に構造物の損傷度を拘束条件として加味し,非定常不規則対乱に対する非線形構造系のダメージコントロールを反映することのできる最適化アルゴリズムを提案した。リスク評価に基づく新しい制震思想を確立し,従来の制震の考え方や効率性との違いを明らかにした。 5.本研究で開発した構造同定,ニューラルネットワークによる学習アルゴリズムと振動制御の効果を総合的に評価するとともに,実際の構造物において実用化する上での諸問題について,整理と検討を進めた。
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