研究概要 |
本研究の主な成果は次のようにまとめられる。 1.拡張カルマンフィルター(EK-WGI法)を用いて、多自由度構造物の劣化履歴復元力特性を同定するためにアルゴリズムを開発した。数値計算の結果、本方法を用いれば、非線形性が強いときでも、線形および非線形挙動を予測することができ、同定精度も高いことがわかった。ただし、劣化特性を表すパラメーターは、構造応答に及ぼす影響が大きくないため、真値よりもずれた解に収束した。 2.振動系をシステムダイナミクス(SD)でモデル化した上で,自己学習による更新過程を実施する方法を開発した。SDモデルの骨格構造が正確にわかっている場合には安定かつ高精度な同定結果を得ることができた。しかし、より複雑なSDモデルになると、レベル変数は的確に同定されるけれども、各リンクの重みは真値とは異なる値に収束し、時には発散することもあった。 3.ニューラルネットワークによる自己組識化の概念を用いて、システム同定を図る技法を考案した。ここでは、グローバルかつローカルな繰り返しを反復的に実施することにより、時間依存型のネットワークの学習を行い、安定かつ高速にシステム同定を行うアルゴリズムを提案した。この方法を用いれば、構造化学習を行うことにより、振動系を規定するパラメーターのみならず、履歴復元力特性を表す数理式(構成方程式)を得ることができる。 4.パラメーター同定を行いながら、振動応答をアクティブに抑える適応震動制御のアルゴリズムを開発した、コントローラーは遂次型最適制御理論により誘導した。構造パラメーターは、WILFS(重み付きローカルな繰り返しを伴う反復的線形フィルター・スムーザー)法によって、推定した。数値実験を実施したところ、構造同定を伴う震動系の知的制御システムの有効性が明らかになった。
|