研究概要 |
本研究のポイントは,理論物理学における素粒子の衝突による散乱問題の分野において,遠方散乱場の性質より極微素粒子の性質の解明に成功を収めている,遠方散乱場の散乱エネルギー量を表す散乱全断面積の算出過程を,欠陥による弾性散乱場に応用し,散乱減衰率と結びつけることにより損傷度を評価することにあり,本年度は次の手順に従って研究を実行した. 1.素粒子衝突による散乱問題と欠陥による弾性波の散乱問題における各物理量の対応関係を確認した. 2.散乱体性状と弾性波の散乱エネルギーの関係の定式化 散乱波の積分表現を道具として次の関係式を順次導いた. (1)遠方散乱場の散乱振幅の表現 (2)散乱エネルギー(散乱全断面積)と散乱振幅の関係式 (3)形状,物性などの散乱体性状と散乱エネルギーの関係式 3.損傷度と散乱減衰率の関係の定式化と数値実験 研究項目2.で整理した散乱体性状と散乱エネルギーの関係式を,損傷度と散乱減衰率の関係式に拡張した.この際のポイントは,損傷の程度を表す指標である散乱減衰率と散乱エネルギーの関係式にあり,損傷度の評価を次の手順に従い実行した. (1)散乱エネルギー,散乱減衰率,損傷度(微小欠陥の個数と分布)の関係式の導出 (2)散乱エネルギーの評価 (3)散乱減衰率の評価 (4)損傷度の評価 なお,本初年度は微小欠陥の形状として最も単純な球形散乱体に対し,上記過程が数値実験的に機能することを確認した.
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