本研究では亀裂を多く含む岩盤を対象として、それらが熱環境下に置かれたときの変形挙動に関わる基本的な物性の変化に着目して、不連続面を含む岩盤の構成関係を明らかにしようとするものである。具体的には、自然界に存在する複雑なクラックの幾何学的特徴を任意の階数のテンソル量で一般的に表し、それを用いて不連続性岩盤を熱力学的に等価な多孔質媒体として定式化する。さらに、実験的な手法により岩盤の熱・応力・浸透特性の非線形性を明らかにするとともに、連成場の解析を容易ならしめようとするものである。初年度は実験的な検討に重点を置き、次年度には実験結果から明らかにされる構成則レベルの非線形な連成項を取り込んだ形式で岩盤中の構造物を対象とした数値計算を実施する。これらの目的を達成するために、多数の亀裂を含む岩盤材料に熱応力が作用する時の力学挙動を調べるために熱および水分の移動特性を計測する必要がある。そのためには、熱電対など各種の計測用センサーを内部に設置でき、かつ熱媒体を循環させることが可能なセルを用いて所定の熱境界を与えられる構造とした三軸試験を実施する。 平成4年度には、この三軸セルを用いた動的実験を通して岩石実質部分の粘弾性的性質を調べた。また、直方供試体の中心部分に-20℃の冷媒を循環させる装置を用いて、岩質材料の熱変形特性を検討するとともに、その数値解析を実施した。 平成5年度には、熱環境に置かれた地盤材料に対する三軸応力下の応力緩和試験および振動試験から実験的に力学特性の非線形性を前年度に引き続いて調べる。また、熱・応力・浸透が連成する場の数値解析により、変形挙動を総合的に検討する。具体的には、熱・応力・浸透の各々の現象間の連成項を明らかにするとともに等価な連続体に関する透水テンソル、弾性コンプライアンス、降伏条件を用いて、弾塑性解析および浸透解析を実行する。なお、本研究で対象とし得る温度範囲は-20〜+80℃程度である。さらに、今後、代表的な節理性岩盤に対して実証的な検討を加える予定である。
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