大深度地下空間利用等を目的とした地盤掘削工事において、地下水処理の最適化は工費の節約と共に、周辺地下水環境への影響を最小限に抑え、工事全体の成否を左右する重要な課題である。そのためには地下水拳動の定量的な評価が必要であり、地盤の帯水層構成や各層での浸透特性等の把握が重要となる。本研究では、大深度地下掘削に際して問題となる多層帯水層における地下水流動および水圧伝播特性の把握、そして複数の帯水層や介粘土層の浸透特性での算定を目的として、以下の研究を行った。 1.長さ300cm、深さ100cmの軸対称扇形の大型土槽を用いて多層帯水層地盤モデルを作成し、揚水および注水試験の室内模型実験を行い、その結果より多層帯水地盤において地下水に与えたインパクトと各層で計測される水位変動との関係の定性的把握を行った。水位変化の計測用に高精度間隙水圧計をマイコンによって制御する高精度間隙水圧測定システムを作成した。 2.多層帯水層地盤での原位置透水試験結果の新しい解析手法として、有限要素法による浸透解析により水位計測データのシミュレートを行い、帯水層の水理特性を評価する逆解析手法を開発した。 3.各帯水層における水理地質特性や掘削地条件を考慮し、揚水井戸の最適配置ならびに各井戸における必要揚水流量の決定を可能とする排水設計手法として、数値解析による平面二次元浸透流解析手法と最適化手法を組み合わせた手法の開発を行った。
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