融雪係数、地面融雪量及び積雪の粘性係数に関しては昨年度と同様の観測を継続した。特に本年度は5地点で観測を行い、諸係数の流域内での分布を検討した。また、新たに雪層の含水量を測定し、可能保水率を検討した。さらに、本研究で得られた諸係数を用いた予測計算の精度を検討した。以下に、項目別に要約を述べる。 1.融雪係数 観測年及び場所による違いは見られず、昨年度得られた0.18mm/℃hourが流域全体としての値と判断できる。 2.地面融雪量 観測年及び場所による違いがみられ、その原因は地温であることが明きらかとなった。 3.粘性係数 断面観測に関しては、観測年及び場所による違いは見られず、また室内実験も同一の結果となり、北海道での観測に基づき粘性係数を密度の関数として表示した小島の式が東北地方での積雪にも適用できる。 4.可能保水率 ほぼ均質な供試体を積雪から採取し、これに充分な水分を加え、室温がほぼ一定となる雪室内に放置し、含水率の時間的な変化を観測した。加水直後の含水率はかなり大きいが、次第に一定値となり、これは浸透中の水分が全て流出したことによるものであるから、この定常状態での含水率を可能保水率とした。検討の結果、可能保水率は密度の関数として定式化された。 5.予測モデルの精度の検証 本研究で得られた諸係数を用い、積雪深及び融雪量の予測計算を行った。観測結果との比較を行ったところ、予測計算の誤差は±20%以内であった。
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