火砕流は火山の噴火にともなって発生する火山灰や火山れきなどの火砕物が空気中に巻き上げられ、重力の作用により斜面方向に流れ出す現象である。このような火砕流は高温であり、かつ高速に流動するため、大きな自然災害となることが知られている。最近では1991年雲仙・普賢岳で発生した火砕流が記憶に新しい。 このような火砕流による自然災害を防止するためには、火砕流の流動性を知る必要がある。本研究グループは、平成三年度より火砕流のシミュレーションの開発に着手している。このシミュレーションモデルは、傾斜サーマルのモデルに基づいた、流体力学的手法である。今年度の研究では、まず、火砕流を特徴づける高温な火砕物温度変化の予測式をモデル中に組み込む為のモデルの精密化を行った。前年度のモデルでは、火砕流中の空気の温度のみを解析対象としていたが新しいモデルでは火砕物と空気の双方について熱エネルギーの収支式を考慮したもので、より実際に近いモデル化が行うことができた。 火砕流は粉雪雪崩などと同じ固体粒子浮遊流である。この点が塩分差や温度差などだけによる単純な傾斜サーマルと異なる点である。そこで、沈降性物質である硫酸バリウムの懸濁液と塩水を用いた2種類の二次元傾斜サーマルの実験を行った。この結果、粒子の沈降性のため、硫酸バリウム懸濁液を用いた実験では、流下速度は塩分サーマルの場合より早く減衰することが示された。また、サーマルの厚さも塩水の場合より小さくなる。 以上の検討結果を踏まえて、三次元的な地形を考慮した二次元火砕流の流動を解析するモデルを開発中である。モデルでは、上述した火砕流の温度の予測式を含んでいる。温度の大きな変化に伴い、空気の密度と粘性が大きく変化し、最後的に火砕物粒子の沈降速度が大きく変化することによってシミュレーション結果におおきな影響が現われる。
|