研究概要 |
河川流域規模の洪水流出現象を考える上で,メソβ,メソγスケールの雨域の時間的空間的変動をどのように把握するかは重要な問題である. 特に,最近は,デジタル化された気象レーダによって,メソβスケールの雨域の時間的空間的な挙動が,5分単位,数km単位で,実時間で入手できるようになってきた.こうしたデータを利用すれば,メソβ〜γスケールの雨域の挙動の特性を解明できるだけでなく,実時間で予測することも考えられ,洪水の予測,洪水災害の防御に役にたつものと期待される. 本研究では,わが国の他の建設省所管の気象レーダに比べて,地形の影響が小さいと考えられる沖縄のレーダ雨量計のデータを用いて,台風性降雨の時間的空間的降雨分布特性を調査し,それを元に降雨の確率的予測手法の開発を試みた. 台風性降雨は,台風の眼を中心に延びた螺旋状のレインバンドによってもたらされる. よって,まず,このレインバンドによって決定されるメソβスケールの空間構造を解析的に表現する方法を検討した.台風性降雨に限らず,一般の前線性降雨にも適用し得るようにするため,レインバンドの形状を螺旋状に限定しない方法を最初に考え,螺旋状のレインバンドはその方法の特殊化として扱えるようにした.具体的に言うと,x,y軸を水平面内にとったとき,dy/dxがx,yの一次有理式で表されるようなx,y平面内の曲線群によって定まる曲線座標系を導入して,レインバンドの特徴をその曲線座標系を用いて整理することにした.対数螺旋はこのような曲線群の特殊な場合である. この結果,台風性降雨のメソβスケールでの雨域形状を抽出することができるようになった.これを利用して,メソγスケールの降雨セルの発生・死滅特性を,メソβスケールの雨域と定量的に関係付けることが可能となった.
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