わが国で理論の体系化が進んでいる石礫型土石流は、石礫と粘性の無視できる水との混合物の流れである。中国等では発生している粘性型土石流は粗い石礫と粘土やシルトの微細成分を高濃度に含んだ高粘性の泥水との混合物の流れで、その流動機構はまだ明確になっていない。本研究は石礫の間隙を満す流体の粘性を変化させた実験によって、石礫型から粘性型土石流への遷移条件、粘性型土石流の流動条件、可能石礫含有率等を明らかにし、石礫型およ粘性型を包含した土石流理論を樹立することを目的としている。本年は、とくに粘性型土石流の流動則と可能石礫含有率の解明に重点を置いて研究を行った。すなわち、中央粘経3.3mmの砂を粗粒子とし、カオリンを20〜30%含有した高粘性の泥水を間隙流体とする土石流を実験水路に流し、流速分布、濃度分布を測定する実験、および水路内に堆積し始める限界濃度を求めて可能石礫含有率を測定する実験を行った。一方、土石流中に粗粒子が分散した状態で流動が可能になるためには、粒子同士の接近流速が間隙流体の粘性に応じたある値を持っていることが必要であるとの考察から、粒子分散圧力およびせん断応力に関する構成式を導き、理論と実験との対比によって、構成式中に含まれるパラメータ値の同定を行った。これにより、粘性土石流の流速分布、濃度分布、可能石礫含有率が説明された。粒子分散機構を直接検証するためには、土石流中の粒子に働らく圧力変動を直接知る必要があるので、本年度購入した2分力測定器を用いた実験装置を作成し、単純な場での圧力変動の直接測定を実施している。来年度は、間隙流体の粘性がより小さい鉋城の実験を行って石礫型から粘性型への遷移を明確にし、河床の侵食によって粘性土石流が形成される機構の考察も行って、土石流理論を体系化する。
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