本研究は、河川水の利用率の高低により同規模の異常渇水に対する被害の程度が異なり、社会的に不公平となっている点に注目し、貯水池系による流況操作や取水制限を受けた状態に対する渇水被害度を河川水利用率をパラメータとして把握・表現する一般的方法を究明し、同時にその共通の尺度で表される被害度の生起確率の評価法を確立することを目的とするものであり、これまでの研究経過は以下のようである。 (1)従来から提案されている渇水被害度の評価指標の特性、妥当性の比較・検討に関する資料解析的研究では、各種の指標を、渇水の(1)長さ、(2)大きさ、(3)厳しさ、及び(4)経済的被害額という4つのカテゴリーに、分類し、それぞれから代表的なもの、即ち、(1)では水不足発生日数、(2)では不足%・日、(3)では(不足%)^2・日、(4)では渇水被害額(=最大給水制限率で決まる被害額+給水制限率別日数に比例する被害額)、を選び、過去(昭和39年〜昭和62年)の著名な渇水(23件)についてこれらの指標を評価(ただし、資料不足のため評価不能の場合もあった)し、比較・検討したところ、各カテゴリーの指標間にかなり高い相関があることが判明した。このことは生起確率の評価が容易な指標を1つ選択すればよいという可能性を示すものである。 (2)渇水時のダムからの給水方式や節水方式のパターン分類化については上記の著名な渇水時の他に、重大な渇水に至らない前に降雨に恵まれたケースも重要と考え、そうした資料の調査・収集と整理中の段階であるが、本来無限に有り得る状態を有限個に分類するには、大胆な単純化となんらかの規格化が必要であり、その方法論を模索中である。 (3)モデル水系によるシミュレーション研究については、近畿、四国、中国の各地方からそれぞれ、1水系を選び、現在水文資料、地形・地理条件等の整理・解析中である。
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