研究概要 |
本研究は,沖合海域に「いけす施設」が設置された場合の耐波設計手法を確立することを目的として,3ケ年にわたり種々の側面から検討を加えるものである。研究初年度である平成4年度は,養殖いけす施設の波浪応答現象に関して,実験的検討事項として,波動水槽における水理模型実験を行うとともに,理論的検討事項として,いけす施設の波浪動揺シミュレーションモデルの開発と精度の検証を行った。まず実験では,水槽内に1/100縮尺の「いけす」模型を保留し,これに規則波を作用させた。波動条件下での施設の動揺量ならびに索張力は,ビデオ・データ解析システムによって計測され,波の特性の変化にともなう,いけす施設の動的な運動特性を明らかにした。一方,理論的な検討事項として,離散化要素法を用いて,施設本体(上部外郭部ならびに側面および底面網部)と保留索をモデル化し,種々の波浪特性を有する規則波に対して施設の動揺ならびに保留張力を算定するためのシミュレーション手法を開発した。以上の検討から,波浪応答シミュレーションモデルについては,ほぼ満足できる精度で波浪動揺を再現できること,しかし,保留索張力の変動特性については,シミュレーション結果と実験結果が,必ずしも一致化しておらず,今後,保留索のモデル化の方法ならびに物理定数の決定方法に検討の余地があることがわかった。また,現地観測システムに関しては,現有の観測システムならびに解析方法に関して,実験室内において試行・改良を加えた。来たるべき次年度の,現地海域での本格観測のための準備は終了しており,一週間程度の連続観測と施設の3次元動揺が解析できる状態になっている。当該年度の研究の概容としては以上のとおりである。
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