研究概要 |
(1)1993年度は降雨量が平年値大きく上回り,日照時間が極端に少ない異常気象が続いた。 (2)例年発生する底層部の貧酸素化はみられなかったが,8月と9月の中旬および11月上旬に,水面下1〜6m層で3ppm以下の強い貧酸素水塊が形成された。亜表層部の貧酸素化は,いずれの場合も,天候が悪化し日射時間が極端に低下した直後から始まり,貧酸素化の初期には鞭毛藻プランクトンが1000cells/mlを越え,赤潮を形成していた。 (2)鞭毛藻プランクトンは日中表層に分布するが,日没とともに水面下8〜15mまで鉛直降下する。DO消費速度は海水中のプランクトン数(クロロフィル濃度)に比例して増大した。その結果,鞭毛藻プランクトンが表層部に1000cells/ml程度おれば,これが夜間に降下し亜表層部で10〜20mg/m^3/hの酸素を消費することが分かった。 (3)亜表層部のDO収支を推算した結果,亜表層部のDO濃度は海水中での生産と消費に支配されており,鉛直混合や差込みによるDO補給の影響は小さかった。 (4)貧酸素化が始まった9月18日のDO生産速度および消費速度は,それぞれ30,40mg/m^3/h程度であった。9月18日頃から日照時間が減少し、生産速度Pは10mg/m^3/h程度まで減少する。一方,海水のDO消費ポテンシャル(Cp=40mg/m^3/h)は減少することはなく,むしろ,鞭毛藻プランクトンの夜間降下による亜表層部でのDO消費10〜20mg/m^3/hが加わわるため,DO消費速度60mg/m^3/h程度まで増加し,急激な貧酸素化が生じる。 (5)9月23日頃から天候が回復すると,消費速度は40〜60mg/m^3/hのままで,DO生産が60〜75mg/m3/hまで増大し濃度が回復する。
|