平成4年度は、砂層地盤内塩分残留現象の基礎的研究項目に重点をおいて研究を推進した。研究実績の概要は以下の通りである。 (1)塩分の吸着と空隙内貯留を伴う塩水の分散機構の解明については、既有の砂柱モデル装置と電導率計を用いて、塩水の侵入と排水を繰り返す鉛直一次元実験を実験砂に硅砂を用いてレイノルズ数が0.1〜2の範囲で行い、砂層内に配置した電導率検出部(平成4年度購入)で塩分濃度の変化を測定した。その塩分濃度測定結果を一次元分散方程式の理論解に適用して、分散係数、遅れ係数および減衰係数を同定した。その結果、これらの係数はレイノルズ数に依存すること、侵入過程と排除過程で値が相違すること、分散定数は0.06〜0.1の値でレイノルズ数が大きくなるほど大きな値を示すが排水過程の値が侵入過程の値より大きいこと、遅れ係数は侵入過程で1.25のほぼ一定値であるのに排除過程では1〜1.2でレイノルズ数が大きいほど1に近づくこと、減衰係数は侵入過程と排除過程でほぼ同じでありレイノルズ数が大きくなるほど大きな値を示すが10^<-4>程度の小さな値であることを明らかにした。 (2)鉛直二次元塩水分散の数値解析については、既有の鉛直二次元砂層モデル装置と電導率計および多点切り替え装置を用いて、塩水の侵入と排除を繰り返す鉛直二次元実験を行って塩分濃度の変化を測定した。その結果、淡塩境界面の形状は侵入過程と排除過程で形状が相違し、排除過程では海側で早く淡水化されるのに対して、侵入先端位置の淡水化は遅れることが確認された。この塩水分散現象の数値解析を現在行っているが、分散パラメータの変化を有効間隙率の変化に転化することに苦慮している。
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