昨年度の実験的検証において、実験装置そのものの精度とくに造波された波浪場が一方向規則波であっても空間的に大きく変動することが問題となった。そこで今年度は、まず多方向造波装置を用いて一様な波の場を作り出すことを当初の研究目的とした。 多方向造波装置の造波理論の検討から始めて、ようやくに、造波板端部の振幅を直線的に減少させること(端部制御法)により、非常に一様な波の場を作り出せることを見いだした。ただし、理論は非回転渦無しの微小振幅近似のもので、個々の造波板から発生する波の重ね合わせとして波の場求める。個々の造波板の振幅を任意に設定できるので、その値を操作することにより得られる波の場がどう変わるかを調べた。その結果、造波板端部の不連続にともなう回折現象が波の場を非一様にしており、その変動は通常の実験条件下では2〜3割にも達し、本研究のように非線形効果を問題にするような実験は不可能となることもわかった。 ついで、理論的に得られた結果を、造波装置の操作方法に組み込み、端部制御法の有効性についての実験を行った。結果は理論的な予測どおりであり、適切な端部制御を行うことにより非常に一様な波の場を作り出せることがわかった。この成果は論文として公表する予定である。 そこで、ようやくに本来に目的である2方向波の非線形干渉の実験ということになるのであるが、今度は、非線形干渉の非定常性という問題が出てきて、KP方程式の解という定常解との単純な比較は難しそうであることがわかったところで時間切れとなった。
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