交通実態調査への画像処理手法の適用可能性及び迅速・簡便な計測システムの構築を目的として研究を行った。 1.システムは、ビデオカメラ、VTR、NTSCデコーダ、画像処理装置、ミニコンピュータおよびページプリンタで構成した。 2.交通流データ取得のため、ビデオ画像データから車両を抽出する手法を検討した。第1の手法として、ビデオ画像の微少時間離れた前後のフレームを重ね合わせて引き算し、移動している車両の残差を得る。この残差は、1台の車両の一部が分断された形で残ったものとノイズである。これに2値化、小図形除去、穴埋め、ラベリング処理をして残差の重心を得、クラスター処理をして車両の重心を得た後、車両の軌跡、速度を計算した。 3.実験の結果、2値化時のしきい値は輝度値レベルが0〜255の範囲で白系統の車が25黒系統の車が15であった。速度計測誤差は平均5%であり、ズームレンズ使用による誤差は生じないことが解った。 4.第2の手法として、ビデオ画像から直接車両の形を抽出する方法を考えた。これはエッジ抽出処理により得られた車両の輪郭内を、差分により得られた残差を核に塗りつぶして車両の形を得る方法で、塗りつぶしには新しく微分成長法を開発した。これからより正確な車両の重心を得た。 5.さらに、ビデオ画像を連続的に処理し車両の重心を得て、台数、速度、軌跡を算出するプログラムを開発した。 6.微分成長法を用いた車両抽出の特徴は、次の通りである。 (1)従来の手法に比べ、比較的正確に車両の形そのものを抽出することができる。 (2)ある程度車両密度の高い場合にも車両の移動方向に拘らず抽出が可能である。 (3)照度の変化に起因する画像データの明るさの変化に対して、しきい値を更新する必要がほとんどない。 (4)影の影響をある程度軽減することができる。 7.応用実験として、交差点内の車両の地点速度測定、進路方向別通過台数計測を行った。
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