本研究ではヘリコミューターや海上交通など中小の新規サービスの需要育成策、また乗用車による道路交通問題のように行政にとっての需要誘導・管理方策を取り上げ、従来の需要予測の方法では十分に捉えきれない、量的に微少な需要変化や顕在化しにくい意識変化を、マーケットの横断的な分析と普及過程の継断的な分析によって明らかにしようと考えた。以下に本研究の主要な成果を示す。 1.首都圏のヘリコミューターをケーススタディとして、需要と広告・広報等との時間的な関連を分析し、広告、博覧会開催、鉄道サービス改善などで需要変化が生じる現象をモデル化した。その際、新規サービスの導入期、成長期、定着期、展開期の各ステージに相当する時点で利用者アンケート調査を実施して、利用者の特性の変化と価値意識の分析とを行った。また、首都圏における海上交通サービスを対象にして、利用者への意識調査の結果から多様な価値意識をもつ個別の選好モデル化を行っている。 2.新規参入の交通サービスや自動車交通による渋滞・環境問題に対するプロモーション効果の推計を行うための方法論を検討した。まず、特定利用者層に母集団を限定した上で、調査票を工夫して価値意識や選好構造の違いから集団でセグメントする分析方法を提案し、意識調査を独自に行い、コンジョイント分析やポジショニング分析からプロモーションに対する反応の違いが生じる幾つかの層を抽出している。また同様な方を海外旅行時のエアライン及び旅行経路の選択モデルに適用して、実行動データからも母集団を目的や旅行形態によって明確に区別し、航空サービスの種々の変化に反応する層の違いを明らかにしている。
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