信号現示の切り替え時においては、複雑な錯綜が生じるため、道路利用者の的確な状況把握に基づいたクリアランス時間の設定が必要である。本研究では、様々な条件下での交通現象を分析し、特性に応じた錯綜の状況の明確化を図り、信号制御の現示企画について交通処理方法、交差点形状等との関連でクリアランス現示時間の適切な設定方法を検討するとともに、交通運用状態の評価方法を開発することを目的に検討を行った。 1.信号交差点での交通現象の実測 ; 運転者と並んで重要な交通主体である歩行者を対象に交通現象観測を実施して、各種条件下におけるデータの充実を図った。観測の実施に当たっては出来るかぎり効率的に分析上の有効サンプルを収集するように配慮したが、当初の目論みどうりには事が進まず、停止確率算定に耐えうるサンプル数の得られた交差点数は9地点であった。観測機器としては、従来と同様にビデオカメラを使用した。 2.挙動特性分析および停止確率モデルの開発 ; 上述観測データに基づいて、車両と歩行者の錯綜状況、歩行者の停止挙動に関する現象分析・モデル化を行った。歩行者の信号変わり目における停止確率の関数形としては、車両運転者の場合と同様にロジスティック曲線を適用した。観測各交差点で求まるモデルパラメータは、各交差点を取り巻く条件との関連のもとに一定の法則性があると考えられることから、数量化理論I類を適用して停止挙動の構造を考察した。観測を行った地点数があまり多く無かったことから、説明変数として取り込める変数(アイテム)数に制約があったが、その割りには実用上良好な分析結果が得られた。 3.開発モデルによる交通運用状態評価方法の検討 ; 検討した停止確率モデルから得られる情報を用いて、現示変わり目における制御方法を検討する方法について考察し、モデルの適用性について検討を加えた。
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