研究概要 |
本研究は大都市都心部における総合的駐車場管理システムの構築を最終目的とするものであり,以下の事項について検討を行った. 1)筆者らは駐車管理システムの主要な柱として,a)駐車スペースの整備,b)駐車スペースの有効利用,c)駐車に関するマナーの向上,d)駐車需要の抑制を挙げてきたが,これらの全体を広義の駐車管理システム,b)に関するものを狭義の駐車管理システムとし,駐車管理方策の枠組みを明確にした.本研究では後者について検討した. 2)効果的で持続性のある駐車管理システムは,運転者の駐車場所選択行動分析を踏まえたものでなければならない.そこで,本研究では仮想的な実験に基づいて求められた駐車場所選択行動モデルを精緻化し,駐車管理システムの検討により適したモデルを構築した. 3)本モデルはある1人の運転者が行う駐車行動を予測することはできるが,多くの運転者が駐車場所を選択し,その行動によって駐車場の利用状況が変化するような現実の場での適用には困難が伴う.そこで,本研究では上記のモデルを中核とし,これに駐車場運用サブモデル,駐車場案内情報提供サブモデルを加えて,駐車管理システムを評価するためのシミュレーションモデルを開発した. 4)上記のシミュレーションモデルを用いて,種々の駐車管理方策の効果を評価した.その結果,駐車管理システムとしては,駐車場のサービス水準のバランスを駐車料金の調整等で図り,適切な駐車取締りを行うとともに,駐車場案内情報の提供を行うことが効果的であるとの結論に達した.このような知見は,経験的にはすでに既知のことと言えるが,このような事項について,駐車場所選択行動分析に基づいて理論的かつ定量的に評価し,望ましい駐車管理システムのあり方を示したところに本研究の意義と特徴がある.
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