音環境を評価するために必要となる指針を得るため、音風景の調査を実施した。具体的には、(1)京都市内の住商混在地区から8ヶ町を選び出し、まず聞き取り調査を実施した。これらの8ヶ町は、京都のもっとも古い町であり、現在も京都市の中心地であるとともに、祇園祭という伝統行事を執り行う町で、山鉾町と通称されている。(2)聞き取り調査の結果を参考にして、騒音計とDATテープレコーダを用いて地域内の音を録音し、これを分析して、音環境の物理的把握を行うとともに、音源識別を行い、各音源のパワ寄与率を算出した。(3)聞き取り調査の結果を参考にして、質問紙調査を留め置き法によって実施した。質問紙の質問は、季節の音、時間を知らせる音、自然の音、祭や儀式の音、物売りの声、地域らしい音などを自由記述する形式で行った。(4)一方、農村地区として滋賀県蒲生郡蒲生町を選び、(1)〜(3)と同様の調査をおこなった。 山鉾町のような都市中心部においては、日常的音風景は交通騒音に満たされて単調であるが、祇園祭の期間中は、音風景が一変し、祝祭的になる。また、居住者の祭の音に対する意識が、外部の者にはうかがいしれない面を持つことが知られた。このような調査を、都市内街区ならびに農村地区で実施した。その結果から、音環境と居住者の音意識を地域横断的に比較する方法を提示することができた。 把握される音環境は、調査方法に依存する。一方、音環境の評価は、記述された音環境に基づいてなされる。したがって、音環境の調査方法が、評価の方法に直接的に関係することを考察した。
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