平成4年度においては、本研究に関連する内外の研究動向について調査を行うとともに、道路網上での交通流動を模疑実験するためのトラフィックシミュレーションモデルを作成し、パーソナルコンピュータによるそのコンピュータプログラムを開発した。 (1)交通流を連続流体とみなしたマクロモデルによるトラフィックシミュレーターの基本モデルを作成し、そのコンピュータプログラムを開発するとともに、小規模な実際の都市道路網への適用を行った。交通量や交差点遅れに関する計算値と実測値の比較の結果、本モデルは実用的には十分の予測精度を有していることがわかった。また、入力条件の変化に対する出力値の応答性についても、非常に鋭敏な結果が得られ、このことから本モデルは代替的手段間の効果の比較に有用であることがわかった。演算速度についても実用的に許容できる範囲にあり、パーソナルコンピュータで十分のシミュレーションシステムを構築できることがわかった。(2)非定常な現象や、より詳細な交通拳動を分析するための、個別車両の動きを基にしたミクロモデルによるトラフィックシミュレーターの基本モデルを作成し、そのコンピュータプログラムを開発した。小規模な実際の道路網を対象としたテストランを行った結果、個々の車両の運動は発進、停止を含めて十分滑らかであり、道路内の交通流動を適切に表現できることがわかった。また交差点遅れについても、理論式との比較の結果、十分の予測精度が得られていることがわかった。ただし経路選択の方法によっては、交通流状態と実際の経路選択との間に時間遅れが生じ、交通流状態がやや不安定となることがあることがわかった。これらの点については、今後さらに多くのシミュレーションを行い、実験データを蓄積するとともに、モデルの修正・改良を図っていく予定である。
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