福祉バスについては現在、統計資料が整備されていない。これは、福祉バス研究の遅れを象徴する事象であろう。そのため福祉バスの実状を知るには、現地で個々の実例を視察・取材せねばならない。事例分析のため今年度は全国の典型的な5例(熊本県・熊本市・奈良市・斑鳩町・滋賀県)を取材した。 これら5例の福祉バスには次のような共通点が見られた。【.encircled1.】利用者は身障者とその介護者に限られている。【.encircled2.】リフトが装備され、車イスのまま乗降できる。【.encircled3.】料金は無料。【.encircled4.】専用運転者を雇用している。【.encircled5.】運行に際し運輸省の許認可は不要であった。一方、福祉バスの運行形態や利用効率には事例ごとの差異が著しい。たとえば運行形態では、わずか5例ですら次のとおり4タイプに分類される。利用効率(運行1回当りの利用者数)にも1〜16人といった軟差が見られる。 福祉交通には「採算性」指向が無いといえども、1運行1人という低利用は福祉バスの今後に変革を迫るであろう。各自治体の経験と工夫を集めて『福祉バス運用マニュアル』に仕上げる作業が、焦眉の課題であろう。 〓〓
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