最終年度に当たる平成6年度は、過去2年間の成果を踏まえて次の2つを分析した。-(1)福祉バス運行の全国実態、(2)“乗合"福祉バスの採算性。 まず前者については、全国の公共福祉施設を対象として、「福祉バスアンケート」調査を実施した。その集計結果から次のような全国実態が判明した。(1)福祉バスの導入は1980年頃から急増し、現在では公共福祉施設の72%が保有している。市町村・県が車両を購入して福祉施設に運行委託している(61%)。(2)公共福祉施設の93%が無料運行しており、運行回数は2往復/日(平日)が最も多い。(3)しかし、1運行当たりの乗車人数は数人であり利用効率は低い。(4)人件費を含む運行費用に対して財源面の保障が弱く、福祉施設の負担が大きくなっている。 つぎに後者については、“乗合"福祉バスという新システムを想定し、運行コスト(=運賃)の計算法を数式化したあと、採算のとれる運賃を試算・考察した。その結果、次のような特性が明らかになった。(1)乗合福祉バスが黒字になるための運賃は、路線長・利用者数・運行回数の3要因で決まる。(2)バス会社が乗合車両で運行する場合に比べて、市役所等が貸切車両で運行すると、運賃は3倍以上にもなる。費用面からみれば前者のほうが有利である。(3)ただしその場合でも、運賃をかなり高く設定せねばならない。乗合福祉バスを福祉施策として位置づけるなら、福祉分野からの補助が必要であろう。
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