研究概要 |
本研究では,信頼性の高い道路網整備計画および運用計画のために,大規模道路網の信頼性解析法を開発することを目的としている。特に道路網では,あるルートが閉鎖された場合,大量の迂回交通が発生して他のルートの円滑な走行移動にも重大な影響を与える。したがって,本研究では経路交通フローを明示的に考慮した信頼性解析法を開発する。本信頼性解析モデル,(1)個別のリンク(道路区間)の信頼度推定モデルと,(2)リンクの信頼度からノード間信頼度を求めるシステム信頼性解析モデルの両者から構成されている。前者は,交通需要の平均値と交通容量等の入手容易な交通指標から変動係数を推計し,これらからリンク信頼度を推定する手法である。これは,データ制約の多い予測や代替案比較に十分耐えられる信頼性解析法である。後者は,リンク信頼度からノード間信頼度を求めるシステム信頼性解析手法である。すでに小規模なネットワークを対象に従来法との比較を行い,厳密解法に対し計算時間は1/20000以下,モンテカルロ法との比較でも1/200程度の計算効率であることを確認している。計算に利用するパスやカットが交通の経路やスクリーンラインに対応するので,信頼性解析結果を実際における交通対策と結び付けて評価できる利点がある。 本年度の成果は,過年度までに開発したリンク信頼度を交通フローの変化に応じて内生的に得ることのできる方法(リンク信頼度推定法)を利用し,実際のネットワークを対象に交通規制や制御による信頼性向上効果の一般的傾向を分析したことである。リンク信頼度を内生的に得ることによって,道路網整備や交通管理運用策の代替案比較が可能となる点に本研究の大きな特色がある。ODフローの変動がリンクフローの変動に及ぼす影響を定式化し,交通運用策の導入によって信頼性が向上するメカニズムを明らかにした上で,京都市のネットワークを対象に,一方通行の導入効果の評価を進めている。
|