フミン質等の前駆物質を含む原水に塩素を添加するとクロロホルム等の発ガン物質が生成するという事実が明かにされて以来、塩素消毒に対する信頼感が揺らぎはじめている。水源の切り替えや原水の浄化という根本的な対策が当面難しい場合、塩素に代わる消毒剤の検討が必要となる。筆者は塩素と同等の消毒・残留効果を持ち、有害塩素化有機物を副生しないと言われている二酸化塩素に注目して検討を進め、以下の新たな知見を得た。 1 二酸化塩素の消毒特性・残留効果に影響を及ぼす因子について検討した結果、 (1)水温の上昇は消毒効果を促進するが、その差異が生じるのは二酸化塩素添加直後の僅かな時間であって、浄水場における消毒工程の時間を考慮すると実用上水温の影響を問題にする必要はないといえる。 (2)二酸化塩素と微生物の接触形態が消毒効果に及ぼす影響について、同一条件の消毒実験を靜置下と振盪下で実験したところ両者に顕著な差異は認められなかった。 2 二酸化塩素の残留効果を塩素と対比して実験したところ、塩素に劣らない残留効果を期待できることが明らかになった。しかし、同じ添加濃度で常に二酸化塩素の残留濃度が下回るので、二酸化塩素が失われたときに悪条件が重なると、各種細菌の爆発的な増殖の恐れがある。 3 二酸化塩素の消毒力低下の原因は揮発性の高さにあるので、効率的な消毒法は消毒槽やその後の配水施設を被圧下に置くことである。 4 二酸化塩素消毒のモニタリングに最も適切な指標細菌は、腸内細菌ではKlebsiellaであり、原虫やウィルスなど消毒剤抵抗性の高い病原微生物の消毒効果判定には有機栄養細菌が望ましいという結果が得られた。
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