本年度の研究では、SUS304ステンレス架構の地震時応答性状を把握する目的で、単純な1層1スパンの模型骨組による振動台実験を実施した。架構はいずれも梁降伏先行型であり、振動台の加振方向の構面内の梁のみがステンレス角形鋼管で構成されており、梁端部はエンドプレート形式で柱頭部にボルト接合されている。試験体の種類は合計3体であり、入力用地震動として、ElCentro-NS、Mexico-TLHD NS、Hachinohe Kowan-EWの3波であり、ステンレス鋼梁が大きな塑性変形を蒙り、架構が最大耐力に到達するまで加振した。実験で得られた主な知見を纏めると、以下のようである。 1.架構の弾性時における減衰定数は約1%前後であり、従来鋼で構成された架構の減衰定数にほぼ等しい。 2.架構の水平剛性は、短柱圧縮実験結果から求められる計算剛性と比較しても相当小さく、冷間成形に伴う鋼管材の剛性低下を適切に評価する必要性のあることが明らかとなった。同様に、架構の降伏耐力、最大耐力についても、鋼管製造時の残留応力などの影響が顕著に現れている。 3.0.1%オフセット耐力に基づいて計算される架構の降伏耐力を基準にして、降伏後の架構の耐力上昇について、筆者らによるSS400鋼材を用いた同規模の架構の振動実験結果と比較すると、両者はほぼ類似しており、0.1%オフセット耐力に基づいて架構の降伏後の耐力上昇を評価すれば、従来鋼架構の研究成果を適用できる見通しがついた。
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